人工内耳手術を受けることに関する賛否両論

何となく面白そうだと思ったので訳してみましたが、アメリカの話なので日本とはちょっと状況が違う感じがしますので、ご参考までに。例によって訳の正確性については保証しません(笑)。

原文はこちらになります。筆者は、キャスリン・R・ボウン(Kathryn R. Bown)さんです。

www.bellenews.com

2017年10月2日

人工内耳(CI)を装着することは、ろう者にとってその聞こえを改善する手助けとなります。人工内耳の手術は、難聴者の聴覚を回復させることを意味するものではありませんが、改善することでより普通の生活を送ることができます。専門家のチームは、あなたの耳の状態を診察し、人工内耳の手術に適合するかどうかを決定します。また、彼らは、あなたに対してどのようなことが予想されるかについて助言をしてくれるでしょう。

この手術は、音を電気的刺激へと変換する電極を埋め込むことを含みます。このような方法で、ろう者は聞こえの感覚を得ることができます。手術には、利益を伴うものであるにもかかわらず、非常に多くの議論があります。

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インプラントはどのように作用するのか?

蝸牛は、耳の内部にあって液体で満たされていて、また音波に反応して動く有毛細胞を持っています。

これらの有毛細胞は、それぞれ特定の周波数の音に反応し、その信号が解釈のために脳へと送られます。ろう者は、このシステムに損傷を受けていますが、インプラントは同じように作用します。手術は、雑音を電気刺激へと変換するための小さなサウンドプロセッサの装着を含みます。

変換された信号は、有毛細胞がある場所に埋め込まれた多くの電極がある蝸牛へと送られます。これらの電極はそれぞれ特定の音波に反応し、その結果が脳で解釈されることになります。

CI手術を受けることに対する肯定的意見

1.聞こえの改善

人工内耳手術をしてくれる医師と出会うことができれば、インプラントがどのような効果を持つかについての助言が得られるでしょう。人工内耳は、あなたの聴覚を完全に治すことはできないとしても、その聞こえを改善することはできます。小さな雑音がある環境下でも、手話を使用することなしにほかの人びととのコミュニケーションを楽しむことができるでしょう。インプラントに加えて、読話ができれば、コミュニケーションはさらに容易になるでしょう。

2.危険回避への援助

道路上で、あるいは家の中であっても、自然にある音は危険の信号として役立ちます。例えば、あなたに向かってきている車は、あなたの注意を引くために警笛を鳴らすでしょう。人工内耳をしていれば、その信号を感知する良い機会が得られ、それは潜在的にあなたの生命を救うことになるでしょう。

3.音楽を楽しむこと

人工内耳の手術を受けた後、あなたは自分が好きな音楽でリラックスすることができます。また自然にある音は、あなたの生活体験を改善してくれるでしょう。

4.教育へのアクセス

完全に聞こえを失っている人びとは、教育や仕事への機会が限定されています。ろう者に関しては、その状態について特別な注意を必要とするため、多くの学校は、より多くの負荷をあなたに課すことになるでしょう。

5.より多くの雇用機会

いくつかの雇用機会は、ろうという状態が与えられた仕事の遂行に影響することがあるために、ろうの人びとには適合しないかもしれません。それゆえに、聞こえの改善は、より多くの機会と共に完全な人生を送ることを可能とします。

CI手術を受けることに対する否定的意見

1.すべての人に効果があるわけではないこと

手術は、音の違いの意味を理解することが困難であるために先天的ろうの人びとには奨励されていません。

また、中途失聴者ついてもすべての人に効果があるわけではありません。手術の成功について医師が予言することは未だ難しいこととされています。人によっては信じられないぐらい有用だけれども、他の人にとってはほとんど無用の長物となることがあり得ます。それは、ほとんどの手術が成功したと言われているにも拘らずです。

2.人びとにあなたの状態を忘れさせてしまうかもしれないこと

ある人びとは、CI手術を受けたと言うだけで、あなたの状態は改善して今や健聴者になったと想像するでしょう。この手の人びとは、あなたへの効果的なメッセージを送るための努力を止めてしまうため、あなたの交流や生活体験に影響を及ぼすでしょう。実のところ、多くの患者は、静かな部屋で音を得ることができるだけなのです。

3.非常に高額であること

人工内耳は、非常に高額で、多くの人びとが支払うだけの余力を超えています。人工内耳に失望し、お金を浪費してしまう可能性は十分にあります。

さらに、人工内耳については、継続的に電池を替え、ワイヤーを交換するなど、多くの維持費用がかかります。保険で賄うことができるのは、手術の費用だけであるということは留意する必要があります。

4.技術自体が発展途上であること

この手術に用いられている技術は、まったくもって不十分です。多くの環境音がある場合、CIを装着している人は会話に関わっていくことができないでしょう。これは、電極が同じ神経集団を通じて信号を脳に送っているためです。

その結果、混乱した解釈が脳で発生してしまうため、コミュニケーションはより困難を伴うことになります。科学者はこの技術の改善を図っていると言われているため、われわれは近い将来に改善をみることができるでしょう。

5.維持の必要性

電池とワイヤーは時々交換する必要があります。また、サウンドプロセッサのマッピングも必要になります。

結論

シーン・フォーブス(Sean Forbes)は、ろう者であるにもかかわらずラップ音楽を作っている35歳の男性です。彼は、生後数ヶ月でろうとなりましたが、そのことは彼の夢の実現を妨げることはできませんでした。

人工内耳は、ろう者の人びとにとって非常に議論のあるものです。この技術は、多くのろう者の人びとが健聴者に近い聞こえをもう一度経験することを助けますが、その一方で不首尾に終わった手術の数も未だかなり多いです。理想的には、あなたが、健聴者として暮らしてきた時間があるならば、人工内耳の手術を受けるべきでしょう。

感想

この記事は、基本的にはろう者の方を対象とした記事と思われますが、一般論としてみた場合、難聴者が手術を受ける場合も大体同じような賛否になると思います。もちろん難聴の程度とか失聴期間とかさまざまな個別的な要素がからんでくるので一概には言えない部分も多くありますが。

日本の環境に即して一点だけ付言しておくと、「高額である」というのは健康保険の高額療養費や障害者総合支援法の更生医療によって総額の1割以下で手術を受けて人工内耳を装着することができるので、この部分はアメリカとは違うところでしょうね。維持費に関してはその通りですが。